簿記のお話-4(手形取引について)

簿記のお話-4(手形取引について)

※サイト内の例題等で出てくる店名・企業名他はすべて架空のものです。

掛け以外で後からおカネをやり取りする方法(手形編)

前回では、

(仕入)

日付  借方科目    金  額    貸方科目    金  額  
   仕入   ¥〇〇   買掛金   ¥〇〇
(買掛金)は「仕入に対して後から払います」でしたね

(売上)

日付  借方科目    金  額    貸方科目    金  額  
  売掛金  ¥〇〇  売上   ¥〇〇
(売掛金)は「売上げの代金を後から回収します」でしたね

返品では

(仕入)

日付  借方科目    金  額    貸方科目    金  額  
   買掛金   ¥〇〇   仕入   ¥〇〇
大事なのは(仕入)が 貸方→ へ書かれていることです・ 通常は 仕入 / 〇〇 です

(売上)

日付  借方科目    金  額    貸方科目    金  額  
   売上  ¥〇〇  売掛金   ¥〇〇
大事なのは(売上)が ←借方 へ書かれていることです・ 通常は  〇〇 / 売上 です

 と学習しました。今回は 掛け 以外の方法をご紹介しますね。

手形取引

第2回の 預金について でご紹介した(当座預金)の特徴の一部をもう一度復習すると。

当座預金は、お金を引き出すときは、主に

① 小切手を振り出す

② 約束手形を振り出す←これが今回学習する箇所!

となります。今回は「約束手形の振出」等を学習します。

約束手形を振り出した時の仕訳↓

日付  借方科目    金  額    貸方科目    金  額  
   ××   ¥〇〇  支払手形   ¥〇〇

※ 小切手振出では(当座預金)を使いましたが

  手形の場合は、(当座預金)とはしません。

※ 手形には「約束手形・やくそくてがた」のほかに「為替手形・かわせてがた」もありますが、今回は「約束手形」のみを学習します、文中に「手形」とある場合もすべて「約束手形」のことです。

「小切手」と「手形」の違い

「小切手」は、振り出したら ただちに 当座預金から引き落とされると判断しますので

小切手を振り出した場合は

日付  借方科目    金  額    貸方科目    金  額  
   ××   ¥〇〇  当座預金   ¥〇〇
 (当座預金) が 貸方→ へあるということは (当座預金)のマイナスを意味します。

                       

また「小切手」を受け取った側も、銀行に行けば 直ちにお金がもらえるので

小切手を受け取った場合は

日付  借方科目    金  額    貸方科目    金  額  
   現金   ¥〇〇  ××   ¥〇〇
「他店振出の小切手」は(現金)として仕訳しますから、
「他店振出の小切手受取」は (現金)を ←借方 へ書き・プラスを意味します。 

    

と仕訳を行います。

ところが「手形」の場合は、

振出日:渡した日にち

支払日:読んでの通り、カネを払う日にち

・金額やその他:金額等

が書かれており、とても大事なのは

振出日と支払日が異なる というところです。

つまり、「手形」を振り出す「渡す」方は、{今、手形を渡すがカネは後日払う}ことになり

「手形」を受け取った方は、{今は、紙切れをもらったが、後日 カネになる} ということですので、仕訳も「小切手」の場合とは、異なります。

手形を渡した、振り出した 場合

2/10 買掛金¥150,000の支払いのため、同額の約束手形を振り出して渡した。

    ↓買掛のマイナス

日付  借方科目   金  額   貸方科目   金  額  
2/10  買掛金   150,000 支払手形   150,000
「小切手」と異なり(当座預金)とは書きません・当座からはまだ引き落とされません。
しかし、お金を払う約束「手形の振出」はしているので(支払手形)とし 貸方→ へ記載します。

 振り出した手形の代金の支払い(決済:けっさい)「手形を渡して、後日{支払期日といいます}の話」

4/30 2/10に振り出した約束手形¥150,000の代金が当座預金口座より引き落とされた   

日付  借方科目   金  額   貸方科目   金  額  
4/30 支払手形   150,000 当座預金   150,000
(支払手形)が 今度は ←借方 へ来ました、これは手形代金が引き落とされ(支払手形)がなくなったことを意味します。
また (当座預金)が 貸方→ へあります、これは今まで通り(当座預金)のマイナスを意味し、ここで支払いが完了したことになります。

                      

今度は手形を受け取った方の仕訳

2/10 売掛金¥150,000について、得意先振出の同額の約束手形を受け取った。    

日付  借方科目   金  額   貸方科目   金  額  
2/10  受取手形   150,000 売掛金   150,000
今度は「小切手」と異なりまだカネにはなっていませんが 後からカネになるので(受取手形) を←借方 へ記載します。

受け取った手形の代金の受け取り(取立:とりたて)

4/30 2/10に受け取っていた約束手形¥150,000の代金が普通預金口座へ振り込まれた 

日付  借方科目   金  額   貸方科目   金  額  
4/30 普通預金   150,000 受取手形   150,000
(受取手形)がカネになった「今回は普通預金へ」ので手形はなくなります、 (受取手形)を 貸方→へ記載します。

ここまででお気づきのように

(支払手形)は  貸方→ から始まり ←借方 で終わる

(受取手形)は  ←借方 から始まり 貸方→ で終わる と左右「借方貸方」が逆になります

※手形の裏書・割引は日商2級の範囲となりました。

今後こちらへ変わっていく:電子記録債権・電子記録債務とは?

手形について学習してきましたが、まとめるとこんな感じです。

 手形受取り手形振出し
発生受取手形××××支払手形
 
現金化〇〇預金など受取手形支払手形当座預金

ところで、せっかく学習してきたのですが、経済産業省によると{2027/3/31「2026年度」をもって「手形・小切手」を廃止/電子化する方向が打ち出されました}そこで「手形・小切手」の機能をオンラインでやろうというイメージで行うのが

電子記録債:債権←もらう利 受取手形と同じ考えでよい

電子記録債:債務←支払う義 支払手形と同じ考えでよい

となります。文字が似ているので注意してください。

※どうして手形をなくすの?←検定には出ないと思いますが豆知識として
諸説ありますが、例えば「現物・手形自体 の管理が不要{電子データだから}」とか「手形だと金額に応じた収入印紙が必要で費用も結構発生する{某事例だと印紙代が年間3千万円}が電子だと印紙不要」などがあげられるようです。ネットで{手形・廃止}などで探すといろいろ出てきますよ。

「手形」の代わりに電子記録債務の発生記録
とっても簡単です。今までの学習での(受取手形)を(電子記録債権)へ
(支払手形)を(電子記録債務)とするだけ「つまり勘定科目が変わるだけ」です。

2/10 買掛金¥150,000の支払いのため、取引先の承諾を得て金融機関を通じ同額の電子記録債務の発生記録を行った。{このように文中に「電子記録・・・・」と出てきます}

日付  借方科目   金  額   貸方科目   金  額  
2/10  買掛金   150,000 電子記録債務   150,000
※今回は(買掛金)の支払いの為なので(買掛金)のマイナスです。     ↑支払手形の代わりに電子記録債務

                      

(電子記録債務)代金の支払い

4/30 2/10に発生した電子記録債務¥150,000の代金が当座預金口座より引き落とされた

日付  借方科目   金  額   貸方科目   金  額  
4/30電子記録債務   150,000 当座預金   150,000
※ ←借方に(電子記録債務)で、マイナスとなります(支払手形)の決済と同じですね。

                      

今度は電子記録債権の仕訳

2/10 売掛金¥150,000について、金融機関を通じ同額の電子記録債権の発生記録の通知を受けこれを承諾した。{さきの(電子記録債務)と今回の(電子記録債権)むっちゃ似ていますが、意味は正反対なので注意しましょう}

    

日付  借方科目   金  額   貸方科目   金  額  
2/10電子記録債権   150,000売掛金   150,000
※(受取手形)の代わりに(電子記録債権)でプラスを意味します      ↑売掛のマイナス

                         

(電子記録債権)代金の受け取り

4/30 2/10に承諾した電子記録債権¥150,000の代金が普通預金口座へ振り込まれた

日付  借方科目   金  額   貸方科目   金  額  
4/30 普通預金   150,000電子記録債権   150,000
                ←(普通預金)へ入金され      その分の(電子記録債権)→のマイナス

                      

手形と電子記録は名前が違うだけで仕訳の考えは同じ!

もう一度手形をまとめます、今回は手形と電子記録も表示しますね。

掛代金やその他で「カネの代わりに」受け取る{後からカネがもらえる}
※今回は(売掛金:¥200,000)の回収として手形や電子記録の受け取りとします

  借方    金額    貸方    金額  
手形の場合受取手形200,000売掛金200,000
電子記録の場合電子記録債権200,000売掛金200,000
※ 受け取るものが手形か電子記録かの違いだけ

その後現金化{普通預金に金額が入金されたとします}

  借方    金額    貸方    金額  
手形の場合普通預金200,000受取手形200,000
電子記録の場合普通預金200,000電子記録債権200,000
                             ※ 現金化されるものが手形か電子記録かの違いだけ

手形借入・手形貸付

カネの貸し借りは、通常(借用証書)を書いて行いますが、借用証書の代わりに(手形)を渡す場合もあります。利点としては、手形を受け取って、そのまま金融機関へ預けておけば、期日になったら勝手に現金化されることと、もし手形の代金が払えない場合は(2級で学習)それはそれは大変なペナルティが課せられるので、払う方も確実な支払いが求められるからです。

ここでは通常の金の貸し借りと、手形を使ったカネの貸し借りを学習します。

※本来なら(利息)も発生しますが、ここでは利息は無視します。

通常の貸し借りの場合(借りた場合)

3/15 現金¥250,000を借入れ、借用証書を渡した。

    

日付  借方科目   金  額   貸方科目   金  額  
3/15  現金   250,000 借入金   250,000
カネを借りたので(現金)は増加しますよ ←借方へ           (借入金)は 貸方→ です 

借りた金を返した

4/30 3/15に借りた現金¥250,000につき、全額を普通預金口座から振り込んで返済した

日付  借方科目   金  額   貸方科目   金  額  
4/30 借入金   250,000 普通預金   250,000
   借金を返したので  ←借方へ(借入金) を記載します、

これが(借用証書)ではなく(約束手形)だと

3/15 現金¥250,000を借入れ、同額の約束手形を渡した。                       

日付  借方科目   金  額   貸方科目   金  額  
3/15  現金   250,000 手形借入金   250,000
さっきの(借入金)の代わりに(手形借入金) とし。 同様に 貸方→ へ記載します。

借りた金を返した

4/30 3/15に借りた現金¥250,000につき、全額が当座預金口座から引き落とされた

日付  借方科目   金  額   貸方科目   金  額  
4/30 手形借入金   250,000 当座預金   250,000
借金を返したので(手形借入金)を ←借方 へ記載します。

通常の貸し借りの場合(貸した場合)

3/15 現金¥250,000を貸付け、借用証書を受け取った。

    

日付  借方科目   金  額   貸方科目   金  額  
3/15  貸付金   250,000 現金   250,000

貸した金の回収

4/30 3/15に貸した現金¥250,000につき、全額が普通預金口座へ振り込まれた

日付  借方科目   金  額   貸方科目   金  額  
4/30 普通預金   250,000 貸付金   250,000

これが(借用証書)ではなく(約束手形)だと

3/15 現金¥250,000を貸付け、同額の約束手形を受け取った。                     

日付  借方科目   金  額   貸方科目   金  額  
3/15  手形貸付金   250,000 現金   250,000

回収

4/30 3/15に貸付けた現金¥250,000につき、全額が普通預金口座へ入金された。

日付  借方科目   金  額   貸方科目   金  額  
4/30 普通預金   250,000 手形貸付金   250,000

※通常の(借入金)や(貸付金)に(手形)を付けるだけでよいが、金額や勘定科目の内容をしっかり読み取るようにする。

  後からカネになる    後からカネを払う  
受取手形支払手形
電子記録債権電子記録債務

手形等の練習問題①~④

これからは、使用する勘定科目も考えながら解いてみましょう

例題① 仕入先に対する買掛金¥180,000を支払うため同額の約束手形を振り出して渡した。

日付借方科目 金  額 貸方科目 金  額  

例題② 得意先から売掛金¥250,000の回収として同店振出の約束手形を受け取った。

日付借方科目 金  額 貸方科目 金  額  

例題③ 仕入先に対する買掛金¥350,000を支払うため¥150,000の小切手と残額分の約束手形を振り出して渡した。

日付借方科目 金  額 貸方科目 金  額  

例題④ 得意先から売掛金¥500,000の回収として現金¥300,000と同店振出の約束手形¥200,000を受け取った。

日付借方科目 金  額 貸方科目 金  額  

答え①~④

例題① 仕入先に対する買掛金¥180,000を支払うため同額の約束手形を振り出して渡した。

日付借方科目 金  額 貸方科目 金  額  
買掛金180,000支払手形180,000

例題② 得意先から売掛金¥250,000の回収として同店振出の約束手形を受け取った。

日付借方科目 金  額 貸方科目 金  額  
受取手形250,000売掛金250,000

例題③ 仕入先に対する買掛金¥350,000を支払うため¥150,000の小切手と残額分の約束手形を振り出して渡した。

日付借方科目 金  額 貸方科目 金  額  
買掛金350,000当座預金
支払手形
150,000
200,000

例題④ 得意先から売掛金¥500,000の回収として同店振出の小切手¥300,000と同店振出の約束手形¥200,000を受け取った。

日付借方科目 金  額 貸方科目 金  額  
現金
受取手形
300,000
200,000
売掛金500,000

手形等の練習問題⑤~

※あえて(電子記録債権)なのか(電子記録債務)なのかは、表示していないのでじっくり考えてみましょう。

※ 債=もらえる権利 の      債=支払う義務 の  ですよ。

例題⑤ 仕入先に対する買掛金¥200,000を支払うため金融機関を通じて電子記録の発生を依頼し、承諾を得た。

日付借方科目 金  額 貸方科目 金  額  

例題⑥ 得意先から売掛金¥200,000に対し電子記録の承諾を求められたので了承した。

日付借方科目 金  額 貸方科目 金  額  

例題⑦ 仕入先に対し、かつて発生していた電子記録¥200,000の代金は普通預金より引き落とされた。

日付借方科目 金  額 貸方科目 金  額  

例題⑧ 得意先依頼があり承諾していた電子記録¥200,000につき、本日取り立てが行われ全額が当社の当座預金口座へ入金された。

日付借方科目 金  額 貸方科目 金  額  

答え⑤~⑧

例題⑤ 仕入先に対する買掛金¥200,000を支払うため金融機関を通じて電子記録の発生を依頼し、承諾を得た。

日付借方科目 金  額 貸方科目 金  額  
買掛金200,0000電子記録債務200,000

例題⑥ 得意先から売掛金¥200,000に対し電子記録の承諾を求められたので了承した。

日付借方科目 金  額 貸方科目 金  額  
電子記録債権200,000売掛金200,000

例題⑦ 仕入先に対し、かつて発生していた電子記録¥200,000の代金は普通預金より引き落とされた。

日付借方科目 金  額 貸方科目 金  額  
電子記録債務200,000普通預金200,000

例題⑧ 得意先依頼があり承諾していた電子記録¥200,000につき、本日取り立てが行われ全額が当社の当座預金口座へ入金された。

日付借方科目 金  額 貸方科目 金  額  
当座預金200,000電子記録債権200,000

手形等の練習問題⑨~

例題⑨ 得意先へ、現金¥500,000を貸付け、借用証の代わりに同額の同店振出の約束手形を受け取った。

日付借方科目 金  額 貸方科目 金  額  

例題⑩ 上記⑨にて貸し付けた¥500,000全額の返済として普通預金口座へ入金された。

日付借方科目 金  額 貸方科目 金  額  

例題⑪ 金融機関より借入¥3,000,000を行い、借用証書の代わりに同額の約束手形を振り出し現金を受け取った。

日付借方科目 金  額 貸方科目 金  額  

例題⑫ 上記⑪の返済として全額が当座預金口座より引き落とされた旨の連絡を受けた。

日付借方科目 金  額 貸方科目 金  額  

答え⑨~⑫

例題⑨ 得意先へ、現金¥500,000を貸付け、借用証の代わりに同額の同店振出の約束手形を受け取った。

日付借方科目 金  額 貸方科目 金  額  
手形貸付金500,000現金500,000

例題⑩ 上記⑨にて貸し付けた¥500,000全額の返済として普通預金口座へ入金された。

日付借方科目 金  額 貸方科目 金  額  
普通預金500,000手形貸付金500,000

例題⑪ 金融機関より借入¥3,000,000を行い、借用証書の代わりに同額の約束手形を振り出し現金を受け取った。

日付借方科目 金  額 貸方科目 金  額  
現金3,000,000手形借入金3,000,000

例題⑫ 上記⑪の返済として全額が当座預金口座より引き落とされた旨の連絡を受けた。

日付借方科目 金  額 貸方科目 金  額  
手形借入金3,000,000当座預金3,000,000

今回はここまで。

第4回目ともなると勘定科目や取引のパターンもだいぶ増えてきましたね

何度も復習して、少しずつ覚えていきましょう。

では、次回もよろしくお願いします。

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